※このコメントにはネタバレが含まれています。

具体的にネタバレしている部分があるため、苦手な方は、以下のコメントを読み進めないようご注意ください。

誰の中にでも、上手く結末をつけることができなかった想いや願いが、どこかに少しはあるのではないかと思います。それが、他者への気持ちで、自分の全てだと思えるほど大きなもので、どうなっていくのか、そこに答えを出したのが、命の終わりで。それは抱えて生きていくにも、この世を去ってなおも、重すぎるものだったと思います。

そして、命を抱えて生きていくということは、誰も生まれる場所や生きる場所を選べないこの世において、少なからず誰かの首を絞めてしまっている。
逃れられない現実の中、息苦しさが続いて、出せる答えは、明るいものではなくなってしまって。

自分自身が生きていたい、大切な誰かに生きていてほしいという願い、生きることなんてできない、耐えていけないという想い、その交差から始まった関係。
支えてあげたい、返したいの関係が、緩やかに、溶けあうように、変わっていきながら、物語は進みます。
また新たに、誰かを好きになったら、亡き、大切な人のことは忘れてしまわないといけない、その方が素晴らしい関係なのだとされてしまいがちな世の中ですが。
大切なものを大切なまま抱えていられる、素敵な愛の結びつきを見届けられて、僕は幸せでした。

自殺(結果未遂に終わります)や交通事故死、家族関係の問題(直接的には暴言と搾取、腕をつかむといった日常的虐待を示唆する描写です)や、いじめ(暴力を示唆する発言と、殴りかかる、突き飛ばすといった暴力、精神的苦痛を登場人物に与えるような暴言の描写があります)、一般的ではない性的関係の示唆(発言で触れられるのみです)などが含まれているため、苦手な方は注意した方がいいかもしれませんが、それらの要素より、救済のようなものが中心の作品ですので、物語全体で見ると、個人的には温かさの方が感じられました。

キス以上の性行為は描かれていませんが、それでも、深い愛情が伝わってきて満たされました。
他の方のコメントでもある通り、「BL作品は性的行為こそ重要なものだ!」という方には合わないかもしれませんが、おすすめしたくて初めてコメントを投稿させていただきました。
そんな人間もいるよ、とは思っていただけたら嬉しいです。